フラスコの中に漂う

何だろうと覗き込む力を

君が居ないといふ事について

君の居ない夏を過ごしています、

君の居ない夏は暑すぎて

流れる汗は彼の日の雨のやう

噛んだ爪は車の窓から捨てました

過去のわたしが古くなって

過去のあなたが古くなって

其れから更新されなくなりました

あー、だけど肉体と時間は更新されていきますね、

其れが堪らなく悲しいのでせうか

彼の日からわたしは動けているのでせうか

果たして

 

君無しで築いた今日の感情は

何処にも向ける事は出来なくて

誰かに伝えるにも

君との関係をきちんと伝えるには

君への感情をきちんと伝えるには

言葉だけでは、

とても足りないのです

 

僕に分かるのは

過去の君が正しかったという事で、

ただ僕が至らなくて

君の美しさに敵わなかったという事で、

大切な人ほど大切に出来なくて

好きな人ほど嫌われてしまって

とにかく、

僕の慈しみ方はきっと、甚だ間違っているという事です

少なくとも君にとっては

 

 

 

 

しかし、

僕は君を喪った事を悲しいと感じているのか

其れさえ今は疑わしくて

自分の感情が分からないのです、

君の感情が分からないのと同じやうに

 

だって君に嫌われた事を想う時、

僕は何故か微笑んでしまうのです

ふふ、と音を出して

 

君が好きなのは変わりません、

僕の中では君は永遠に君だし

君が誰かを好きになっても

君は君の侭で居続けるでせう

さういふ人でなければ、

僕は恐らく好んだりしませんから

例えば此の感情が砂になるのなら

僕は僕を一層嫌うでせう

 

君と言葉を交わす事は

二度と無くて良いと思っていて、

例えば君がまた僕に近づいてきたら

僕の方から拒絶するやうな気さえします

きっと同じ事を繰り返して

君も只面倒だろうし

僕も君の期待を裏切りたくはありません

 

あー、僕が泣いていても

君が優しい言葉を掛けることなんてありませんでしたね

さういふ君らしさが僕は好きです

いや、だけど君は優しかった

君の優しさは表面的な物じゃないだけなのです

君なりに優しくしてくれた事を

僕は理解しています

 

 

こうやって君への感情を書き記すのは、何だか嘘っぽくて、好きじゃないですね、

 

僕が例えば死んでも

君が僕の葬儀に来る事は無いでせう

僕が例えば生きても

君が僕の勇姿を見る事は無いでせう

其れはとても淋しい事です

 

僕に出来る事は、恐らく

君が少しでも健やかに生活を営む事を祈るのみです

 

 

 

 

 

 

 

嗚呼、だけど

今、想うのは

僕も美しい生き物になりたかった

其れだけです